母のご信心と大きな御利益
 
                          遠妙寺所属 黒田典之

 
私は約7年前から、家族と共にフィリピンにわたり、生活をしておりました。ところが、約1年前、御本尊に向かって拝んでいると、先代の御導師様が姿を現されました。それ以来、私は日に日に日本に帰りたい、日本でご信心がしたいという気持ちが強くなり、今年の一月私は日本に戻り、このご信心をさせて頂こうと決心をさせていただきました。
ただ、そのときに私には二つの大きな問題がありました。
 一つは妻と娘の事でした、妻は生まれたときからの敬虔なカトリック教徒でしたし、娘もフィリピンの学校に通っていたため、毎日キリスト教の教育を受けていました。そのため、私が本門佛立宗の信者になりたいので日本に帰るといったときに本当について来てくれるのか、そして一緒に佛立宗のご信心をしてくれるのかとても不安でした。そして今年、娘の休みになりましたので、お寺にお参りしてもらおうと思い娘と妻を日本に呼び、何度かお寺にお参りをさせて頂きました。すると、先ず娘の方から「パパ、私本門佛立宗の信者になる」と言ってくれました。とても私も驚きましたので、この状況ではきっと家内も佛立宗の信心をして受け入れてくれるのではと思い、妻にその事を話しましたところ、意に反して妻は涙を流して「ごめんなさい。それだけはできません。許してください。」との事でした。私はその涙を見たとき、これは言葉も違う、文化も違う大変な中で私が言っても無理なんだなと半分諦め、もう2度と言うまいと思うことにしました。そしてその後、お寺にお参詣させていただき、次に京都の本山にお参りさせて頂く機会に恵まれました。母と家族3人と本山にお参りさせていただきまして、妻の様子が少しづつ変わって来たのに気づきました。私が家で、御宝前の前で手を合わせていますと、黙っていても、妻が私の後ろですっと手を合わせてくれるようになり、一度、お寺に来たときにしばらく1階にいると、「早く2階に上がって、御宝前様にご挨拶しなければ。」妻の方から言われてしまいました。そしてある日、私が御題目を唱えていますと、妻が「南無妙法蓮華経」と唱える声が聞こえてきました。私は、「何か最近変わったんじゃないか?」ときくと「そうなんです。なにか知らないけれども、最近自分の心の中が変わってきたみたい。私も本門佛立宗の信者になります。」と妻の口からその言葉を聞くことができました。私は改めてこの本門佛立宗というのは言葉や文化の違いなど関係ない本当に素晴らしいご信心だと思い、この事をご報告、御礼させて頂きました。 
そして、私にはもうひとつ大きな問題がありました。それは仕事でした。私はフィリピンで会社を設立して仕事をしていたものですから、日本で全く仕事がございませんでした。友人に相談しても、いまさらこの歳で就職先がある訳ないだろと冷たい言葉でしたし、実際就職活動をしていますと全くそのとおりで、私の希望する仕事など全くありませんでした。私はただどうしても、日本に残りたかったので、ハローワークに足を運び、今すぐできる仕事を紹介してくださいとお願いし、紹介していただきました。それは、最初は2ヶ月間の仕事との事で川崎のごみ処理場での仕事でした。朝4時半に起き、一所懸命、これも御宝前様のお導きだと思い勤めさせていただきました。その2ヶ月間が終わったあとも、ハローワークの方で倉庫の仕事を紹介していただきました。そんなある日、お寺に行く途中、ふと求人雑誌が置いてある所を思い出しました。その道は今私が目指している道とは全く反対の方向だったのですが、なぜか私はその雑誌があるところまで行き、雑誌を鞄にいれお寺へお参詣させて頂きました。そして、お参りの後、その雑誌の求人広告を見ていますと、一つの求人広告が目に入ってきました。それは、1年間の契約社員ではありましたが、大手企業のグループ会社で、自社での求人募集でありました。私は直ぐに、担当者の方に電話をしますと次の日の五時であれば面接ができますという話でしたので、そのときの仕事は4時までの仕事でしたので、これならば可能と思い面接に行かせて頂く事にしました。
 翌日、その会社にいきますと会社の人たちも温かさそうな様子でしたし、面接での説明をききますと厚生福利も親会社と同じですし、1年契約ということを除けば、私の希望の通りの会社でありました。いろいろ聞いてみますと、私が最後の面接者で、私の前にも数十人の面接者が訪れ、その中で採用はたった一人との事でした。数日後の結果発表との事でしたので、帰路につきました。家では、妻と子供が待ってくれていましたので、今日の面接した会社は自分の希望の本当に良い会社で、就職できたら本当にいいなといいましたら、直ぐに御宝前にお願いしようといってくれまたので、就職成就のお願いをさせていただきました。すると御題目口唱が終わった5分か10分後に電話がなりました。すると、先ほどの希望の会社の採用担当の方からで「採用が決まりました。少し早いですが、他に決められてはいけないと思いお電話しました」との事でした。これは御宝前様からの全くのありがたいお導きだと思って家族全員で、また直ぐお礼の御題目口唱をさせて頂きました。そして、実際に会社にいきますと、想像以上に私にぴったりの会社で、廻りの方もすごく良い方々ばかりです。立ち上げの事業ということで、毎日遅く土日の出勤という状況でしたけれども、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。私は毎日、仕事から帰りますと、御宝前に心から有難うございますとお礼をさせていただいておりました。
 そして7月になり夏期参詣が始まり、毎日朝参りをさせていただき出勤したある日、会社に行くと社長から用事があるから社長室に来るようにとの事でした。その社長は赴任されて来たばかりで、親会社での人事部長はじめ、3つのグループ会社の社長を兼務されていた方でしたので非常に厳しい方と聞いていました。ですから、私は少し緊張していましたが、私は御宝前様からのお導きの会社であることを心に引き締め、社長室にはいりました。すると先ず、7年間のフィリピンの生活をやめ、何故日本に帰ってきたのか聞かれましたので、私は迷うことなく、母が信心している本門仏立宗という宗教を法灯相続して、そのご信心、ご奉公をさせて頂きたいので戻ってきた旨を伝えました。そして、夏期参詣中なので、朝参詣後の出勤である事もなぜか話せました。その日は40分ほどで終わりましたが、次の日、今度は上司から別席によばれました。そこで、この事業の後の予定を聞かれましたので、何も予定がない事を伝えると「実は社長から、正社員になって会社に残るように説得してくれと言われた」との事でした。私はもう嬉しいというより、「なんでかな」「どうなっているんだろう」という気持ちのほうでいっぱいで、もしかしたらこの社長は本門佛立宗のご信者なのではと本当に思うくらいでした。
しかし、私はその答えが直ぐにわかりました。それは暑い日も寒い日も病気で体調の悪いときも、ひとりお寺にお参りし、ご信心を続けてきた母の姿を思いだしたからです。そして、それを支えて下さった、御導師様、御講師様がた、ご信者様かたのお陰だと思いました。私はこれから、こんなに素晴らしい機会を与えてくれたのですから、母に負けないよう一生懸命ご信心させて頂こきたいと思っています。どうか母同様まだ見未熟ものではありますけれども、どうかご指導のほどよろしくお願いいたします。